初歩からわかるイギリスのEU離脱②(イギリス経済への影響、EU、リスボン条約第50条)

 

 

f:id:donaldnakamura:20170721174425j:plain

 

このページのQ&A:

国民投票後のイギリス経済はどんな感じですか?

・「EU」って何ですか?

・「第50条」って何ですか?

・イギリスがEUを離脱する日はいつですか?

・現在イギリスで有効になっているEUの法規はどうなるのですか?

EU離脱をめぐるイギリス最高裁判所の判決とは?

・誰がイギリスの離脱についてEUと交渉をするのですか?

・イギリスがEUを離脱するまでどれくらいかかるのですか?

 

 

国民投票後のイギリス経済はどんな感じですか?

国民投票が行われる前、当時のデヴィッド・キャメロン首相やジョージ・オズボーン蔵相などEU残留派の重要人物たちは、EU離脱が決定するとすぐにイギリス経済は危機に陥るだろうと予測していた。

住宅価格は下落し、失業率の上昇による不景気が予測され、また歳出の大幅削減のために新たな予算見通しが必要になるだろう、と言われていたのである。

国民投票の翌日にはイギリスポンドは下落し、対ドルで15%、対ユーロで10%まで下がった。

 

しかし、イギリス経済が急速に落ち込むという予測は外れ、2016年の成長率は1.8%となった。

これは主要7か国(G7)の中ではドイツの1.9%に次いで2位であった。

インフレ率は上昇し、2017年4月には2.6%と3年半ぶりの高水準となり、その一方で失業率は引き続き低下を続け、11年ぶりの低水準である4.8%になっている。

年間の住宅価格上昇率は2016年6月の9.4%から、2017年3月には4.1%まで下落しているが、依然としてインフレ率よりも高い水準を維持している。

 

 

「EU」って何ですか?

ヨーロッパ連合(The European Union、EU)は28のヨーロッパ各国が参加する経済・政治のパートナーシップである。

第二次世界大戦のあと、商取引を一緒に行っている国同士であれば戦争を防ぐことができるであろう、という考えから経済協力体制を促進するために始められた。

それ以来、基本的にEU加盟各国が一つの国であるかのように、商品や人々が自由に移動できる「単一市場」を形成してきた。

現在は統一通貨ユーロも導入され、19か国が使用している。

またEU独自の議会を設け、環境、交通運輸、消費者の権利、さらには携帯電話の課金法王まで幅広い分野にわたってルールを設定している。

 

 

「第50条」って何ですか?

「Article 50」(第50条)とは、EUからの離脱を望む国のためのプランが書かれているもの。

EU全加盟国の署名で合意し、2009年に発効した「リスボン条約」の条項である。

このリスボン条約ができる前は、EU離脱について正式な手続きは決められていなかった。

第50条はわずか5段落のみの短いもので、

・どのEU加盟国もEU離脱を決めることができる

欧州理事会に通知し、EUと離脱について交渉を行わなくてはならない

・合意に達するまでに2年間が与えられる(全員が交渉期間の延長を望む場合はこの限りではない)

・離脱する国はEU内で行われる離脱についての協議に参加することはできない

といった内容が規定されている。

 

 

イギリスがEUを離脱する日はいつですか?

イギリスがEUを離脱するためには、リスボン条約の第50条を発動することが必要で、それにより離脱の条件を交渉する今後2年間の期間がイギリスとEUの両者に与えられることになる。

テレーザ・メイ首相は2017年3月29日にこの手続きを行っているため、イギリスは2019年3月29日(金)に正式に離脱する、というスケジュールが組まれたことになる。

もしEU加盟28か国全部が合意すれば、この2年間の期間は延長が可能。

 

 

現在イギリスで有効になっているEUの法規はどうなるのですか?

保守党は廃止法案を提出している。

これが可決されれば、イギリス国内でのEU法規の優越が終わりを告げることになる。

この廃止法案では、EU法規をひとまとめにイギリスの法律に盛り込むよう提案されている。

政府は一定期間をかけてEU法規の中の残す部分、変更する部分、そして取り除く部分を決めることになっている。

 

一方労働党は6月の総選挙の際この廃止法案を廃案にすると公約していたが、保守党を破ることはできなかった。

現在労働党は廃止法案への賛成する前に、数多くの変更を施すよう求めている。

 

 

EU離脱をめぐるイギリス最高裁判所の判決とは?

法廷闘争ののち、イギリスの最高裁判所は2017年1月、リスボン条約第50条が発動される前に国会審議にかけられなければならない、との判決を下した。

この結果、EU離脱にかかわるわずか2項のみの法案が国会で審議されることになったのである。

労働党の議員たちはこの法案に賛成することになり、国会は通過した。

しかし貴族院で修正が施され、現在イギリス在住のEU市民たちの権利を保障するよう求めることや、EUと離脱についての合意をする前に「意義のある投票」が国会で行われることなどが求められた。

しかし庶民院ではこれらの修正は否決され、また労働党貴族院議員たちがこの変更を支持しなかったため、貴族院による修正が加えられる前の法案が可決された。

この法案可決により、メイ首相はEUへ正式にイギリスの離脱を告げる書簡を送ることができるようになった。

 

 

誰がイギリスの離脱についてEUと交渉をするのですか?

テレーザ・メイ首相は政府内に専門部署を立ち上げ、保守党のベテラン議員で離脱推進派のデヴィッド・デイヴィスが離脱交渉担当大臣に任命された。

同じくEU離脱推進派であるリアム・フォックス前防衛大臣は貿易担当大臣、離脱推進派のリーダーであったボリス・ジョンソン外務大臣に任命されている。

この3名がそれぞれの担当分野において、EUと交渉を行い、各国との新しい合意を目指すことになる。

最終的な決定権はメイ首相にある。

 

 

イギリスがEUを離脱するまでどれくらいかかるのですか?

リスボン条約第50条が発動されると、イギリスは正式離脱まで2年間の猶予が与えられることになる。

しかし離脱のプロセスがどのように進められるのかについて、実際には誰も分からない。

第50条は2009年の終わりごろに作られたばかりであり、発動されるのは今回が初めて。

 

メイ政権で大蔵大臣を務めるフィリップ・ハモンド外務大臣は、EU離脱をめぐる国民投票の際は残留を支持していた。

そのときには、イギリスが完全に交渉を完了するまで最大で6年かかるという可能性を示唆していた。

イギリスの離脱条件については、EU加盟27か国すべての国会による同意が必要とされているため、これに6年は必要だろうというのが彼の主張であった。

なおイギリスがEUを完全に離脱するまで、EU法規はイギリス国内で有効のままである。

つまり今のイギリスはEUの条約や法律に従う義務がある一方、すでに離脱の意思を告げているため、EU側の決定には参加できないのである。

 

 

 

 

出典:Brexit: All you need to know about the UK leaving the EU - BBC News